
悲しみの波が来たときのやり過ごし方
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波は、家に帰って静かになったとき、買い物の途中で似た物を見たとき、写真や声を思い出したときなど、前ぶれなく来ることがあります。命日や季節の行事が近づく日もあれば、周りが普段の生活に戻ったように見える日に急につらくなることもあります。その波を止める必要も、すぐに意味を理解する必要もありません。まず、その時間に名前をつけます。「これは悲しみの波。今はとてもつらい」「亡くなった〇〇に会いたくなっている」と、心の中か声に出して言います。理由を説明できなくても構いません。今していることを安全に止められるなら手を止め、体を支えられる場所を探します。
両足を床につけるか、背中をいすにあずけて、体を支えているものに気づきます。立ったままなら、足の裏が床に触れている感覚を確かめます。座れるなら、いすに触れている背中や脚に注意を向けてください。毛布やクッションが近くにあれば、抱えるか、体に触れさせます。この3分に悲しみを整理する必要はありません。「今は答えを出す時間ではない。ここで体を支える」と言ってもよいでしょう。涙が出るなら、止めることより、倒れたり急いで動いたりしない姿勢を優先します。できる範囲で、足元、背中、手の感覚へ注意を戻します。
次に、楽な速さで呼吸します。やわらかく吸い、少し長めに吐く。とても深く吸おうとせずに、六回くり返します。途中で思い出に引き戻されたら、数え直そうとせず、「今、息を吐いている」とだけ確認して続けます。それから物を三つ見つけて、色、形、置かれている場所を心の中で言葉にします。「白いカップが机の上にある」「四角い窓が目の前にある」というように、目の前にあることだけを述べます。思い出について考えないように力を入れる必要はありません。注意に、少し休める場所をつくります。言葉が出てこなければ、見つけた物に視線を置くだけでもかまいません。
体を支えられたら、これからの十分のために、行動をひとつ選びます。水を飲む、窓から外を見る、毛布にくるまる、座ったままでいる、誰かにメッセージを送る。食事や片づけ、明日の予定をまとめて考えず、今できる小さな行動に絞ります。連絡するときは、「今、とてもつらいです。少しのあいだ、そばにいてもらえますか」とそのまま送れます。事情を詳しく話したくないなら、「悲しみの波が来ています。解決策はまだいりません。少しメッセージを続けてもらえますか」と伝えてください。返事を考える余裕がないときは、「返事は短くて大丈夫です。読んでもらえるだけでも助かります」と添えます。波がいちばん高いときに、一日ぜんぶを決めようとしないでください。
呼吸や目の前の物に注意を向けてもつらさが変わらないとき、それは失敗ではありません。目標を、悲しみを消すことから、次の行動まで体を支えることへ戻します。呼吸に注意を向けるのがつらければ、そこで止めて、足の裏、いす、毛布など、触れている物に集中します。同じ場所にいるのが苦しいなら、無理なく移動できる範囲で、座れる場所や明かりのある場所へ移ります。連絡した相手から返事がなければ、別の人に「今ひとりでいるのがつらいです。詳しく話せなくてもよければ、連絡をください」と送ります。言葉を選べないときは、先ほどの文をそのまま使ってください。返事を待つあいだは、水を手元に置き、体を支える姿勢に戻ります。
ひとり暮らしなら、波が来る前に、送る文と連絡したい人を携帯電話に保存しておくと、その場で説明を組み立てずに済みます。家族が近くにいなくても、友人や普段連絡を取る人へ、「今夜は亡くなった〇〇を思い出してつらいです。少し連絡を続けてもらえますか」と送れます。誰にもすぐ連絡できないときは、明かりをつけ、床やいすに体をあずけ、水や毛布を手の届くところに置きます。交代勤務や夜の仕事中で席を離れにくい場合は、足の裏と床の感覚を確かめ、見える物の色と形を心の中で言います。離れられる状況になったら、「今、気持ちを立て直す時間が必要です。少し席を外します」と伝え、落ち着いて座れる場所へ移ります。説明を求められても、話せる範囲だけで構いません。
お金を使う余裕がないときは、まず水、窓、毛布、いす、手元の携帯電話など、すでにある物で手順を行います。相談先への支払いが気になるなら、連絡する前に諦めず、「費用が気になっています。利用する前に必要な支払いを教えてください」と尋ねます。日本語で気持ちを詳しく説明するのが難しい場合は、短い文をあらかじめ画面に保存してください。「日本語で詳しく話すのが難しいです。短い文で話してください」「私は〇〇語のほうが話しやすいです。対応できる方法を教えてください」と見せたり送ったりできます。声が出ないときは、「今は話すのが難しいので、書いた文を読んでください」と示します。うまく伝わらなければ、つらさの説明を増やすより、今してほしいことを短く伝えます。「ここで座っていたいです」「連絡を手伝ってください」のような文で十分です。
波がやわらいだら、どこにいたか、直前に何を見たり思い出したりしたか、体にどんな変化があったか、少しでも助けになったのは何かを書きとめます。長い文章にせず、「帰宅後、写真を見た」「足を床につけた」「友人の返事が助けになった」のように残します。その記録が、次の波のための自分用の手引きになります。食事をとれない、眠れない、仕事や家事や身支度を続けられない、連絡への返事ができないといった変化が見えているときは、記録を持って下記の相談先に連絡してください。「悲しみの波が繰り返し来て、食事や睡眠や仕事に影響が出ています。いつ、どこで、何が起きるかを一緒に整理したいです」と伝えられます。自分で判断できないときも、その迷いをそのまま相談してください。自分の安全が保てないかもしれないと感じたときは、すぐに119番などの救急窓口か、下記の相談先に連絡してください。








